REPORT レポート

「『まちの魅力発信』って簡単に言うけど、実際どうすりゃいいのさ?講座」開催!

12月2日(月)、3日(火)の2日間にわたって開催された「『まちの魅力発信』って簡単に言うけど、実際どうすりゃいいのさ?講座」。なんとも長~いタイトルですが、講座の内容はまさにタイトル通り。講師にお招きしたのは、ライター、編集者、ラジオディレクター、構成作家など多彩な肩書きを持つ、ココホレジャパン株式会社のアサイアサミさん。そして電通北海道で数々のプロジェクトを担当している天崎大輔さんです。

▼1日目の会場は上川町役場の会議室

まずは12月2日(月)、上川町役場の中会議室にて、午後2時から講座がスタートしました。最初の講師はアサイアサミさんです。東京生まれのアサイさんは宝島社で編集者として5年勤務するなど、常に文章に携わってきた人。現在は岡山県に移住し「読ませる字から聞こえる字まで、モノヒトコトを日々執筆中」なのだとか。

▼講座などで全国を飛び回る多忙なアサイアサミさん

「いい文章って何?」と題した講座で、教えてもらうのは、もちろん、文章についてです。発信力のキーとなると言っても過言ではない、文章の持つ力。アサイさんによれば「自分を知らないと文章は書けない」ということで、講座の最初に全員が20秒以内で自己紹介を行いました。ちなみに今回参加しているのは、カミカワークプロデューサーとして上川町に移住してきた20代~40代の男女と役場職員の方です。

▼スクリーンには「20秒以内でGO!」の文字が

自己紹介を経た上で配られたのが「作文するための自分へのブレストワークシート」という1枚の紙。そこには「あなたが上川町で行っていることはどんなプロジェクト?」や「読者(まちのひと)に特に伝えたいこととはどんなこと?」など、9つの質問が書かれています。改めて自己紹介をしたことで、自分自身のことすら人に伝えるのは難しいと実感した参加者たち。まずはこのワークシートに自分のことを書き出して、可視化することから始めるというわけです。

つまりは、情報を把握し、情報を整理し、情報を精査し、情報を選ぶということ。アサイさんは「いい文章とは、みんなに読んでもらえる文章です」と言います。何かを発信する時というのは、自分は知っていても相手は知らないことが大前提です。それを伝えるために大切なのは、想いを込めて体温を感じる文を書くこと、そしてちゃんと伝わる文章になっているかどうか冷静になって見つめ直してみること。書いたものはすぐに出さずに、敢えて寝かせてみることも大切なのだそう。「つまり、伝えることの原点はラブレターなのです」と、アサイさん。

▼制限時間は15分、みんな真剣にペンを走らせる(写真左)/アサイさんの言葉に耳を傾ける参加者たち(写真右)

「文章が上手くなりたいなら、文章を寝かす、読み返すということを心がけてください。格段に文章が変わっていきますよ」というアサイさんの具体的なアドバイスもあり、濃密な1時間の座学が終了しました。

続いて午後3時からは講師を務めるのは、この大雪山大学のプロジェクト運営も担う天崎大輔さんです。「PR発想のススメ」と題し、広告の分野を超えて様々な取り組みを行っている天崎さんの講座は、キャッチーなキーワードに溢れています。

▼思わずメモっておきたくなるキーワードがたくさん

「PRとは、アピールすることではありません」と、最初の天崎さんの言葉に、参加者は早くも前のめりになります。PRとはPublic Relationsの略で「関係性の構築、維持のマネジメント」のことなのだそう。また、広告のアプローチはメディアの枠を購入して自ら発信する手法であり、それに対してPRのアプローチはメディアに取り上げられやすい情報を提供してメディアから発信してもらう手法である、と。なるほど、似て非なるものなのですね。さらに話題は、PR発想の基本へと移っていくのですが、ここで引き合いに出されたのが世阿弥の考え方(我見、離見、離見の見を持つこと)や、近江商人の考え方(売り手、買い手、世間が三方よしであること)など、意外にも日本の伝統に立ち返っているのが興味深いところでした。
さらには、北海道米の美味しさが全国的に知られるようになった背景や、ウィスキーのハイボールをジョッキで飲むスタイルが広まった経緯など、普段は
なかなか聴くことが出来ない貴重なお話しもありました。

▼座学の後は、いよいよワークショップの時間

時刻は午後4時。学びが多く充実した座学の後は、再びアサイさんに登場してもらい、ワークショップが開催されました。「良い文・良い言葉を探す」ということで、2つのグループに分かれて、自分たちの思う「いい文章」というものについて、付箋に書き上げていきます。「結論が先」「オチがある」「長すぎない」「誰もキズつけない」などなど、付箋がどんどん貼られていきます。

▼行き詰まったら「ダメな文章」についても考えてみる

思うところを出し尽くしたところで、改めてみんなの意見をチェックしていきます。さらに、これいいな、共感できるな、と思う意見は写真に撮っておくことに。

▼「こんな文を読みたい!」と思ったら、すかさず写メ

「好きな文章よりも、意外と嫌いな文章の方がいろいろあるということが分かりました。それが普通なんです」と、アサイさん。だからこそ、嫌われない文章を書くというのは大事なことなのだと、教えてくれました。みんな深く頷き、1日目の講座が終了したのでした。

▼2日目の会場も上川町役場

2日目となる12月3日(火)は、午前10時のワークショップから始まりました。前日は自己紹介から始まりましたが、この日は「人のことを伝える」ことから進んでいきます。まずは2人1組になって、前日書いたワークシートを交換。それを見ながらお互いにインタビューしあい、相手がいま取り組んでいるプロジェクトや特に伝えたいことについて掘り下げていきます。

▼それぞれ10分ずつ、計20分間のインタビュータイム

取材が終わったら、いよいよ作文に挑戦です。インタビューした相手のプロジェクトにまつわるモノやコトが「ふるさと納税」の返礼品だったとしたら、そのプロジェクトを支援(=納税)してもらうための文章をどのように書けば良いのか?が今回のテーマです。その発信力を高めるためのツールとして「伝えるための右脳と左脳を鍛えるテンプレートワーク」という資料が新たに配布されました。お題はずばり「『ふるさとチョイス』でふるさと納税をしてもらうための記事を書こう」ということで、テンプレートに沿ってタイトルから順番に空欄を埋めていきます。目的はもちろん、自分が先ほどインタビューした相手のプロジェクトにふるさと納税をしてもらうこと。

▼試行錯誤しながらテンプレートを埋めていく参加者たち

ただ、これが意外に難しい! 「ふるさとチョイス」サイトにはタイトルひとつ取っても、30文字・2列以内という制約があり、参加者たちは決められた枠内で魅力をいかに伝えるのか、四苦八苦しています。

▼手書きの人やパソコンを使う人など、文章を書くスタイルもさまざま

「初めての人は、どうしても文章を書くこと自体が目的となってしまいがちなんですよね。文章を書くことは(人を動かすための)あくまでも手段です。」というアサイさんの言葉にハッとさせられながらも、なんとか書き進めていきます。午前中の実践的なワークショップが終わった後、参加者のひとり、水口加奈子さんに感想を聞いてみました。

▼コミュニティプロデューサーとして働く水口加奈子さん

「書くことってあまりしていないと思っていたけど、案外SNSなどで書いている自分に気づきました。でも、いいところを拾い出すなど、インプットやアウトプットをして文章を書くということがなかったので、これを参考に今後、相手に伝わる文章を書けるようになっていきたいと思いました」(水口さん)

▼午後1時過ぎ、講座はいよいよ核心に迫る

お昼休憩をはさんで、午後からは再びアサイさんによる座学の時間です。「伝えるって本当のところなんなの?」と題して、いかに読者に情報を伝え、アクションをしてもらうための文章を書くのかということを学びます。アサイさんは言います。
「いい文章を書くためには、自分と向き合い、自分らしい文とは何かを振り返ってみること。事前のリサーチと準備をしっかりとすること。そして何より、読者を想像するということが大事なのです」

▼実践的なヒントに満ちたアサイさんの言葉を書き留める

さらに「インタビュー記事とはいわば物語です。物語の最後には、記事全体のイメージを印象づける言葉を持ってきます。この言葉を最初に用意しておいて、結論を目指して物語を構築するために、取材の時から言葉を引き出す工夫も必要です」とも。「そして取材相手をリスペクトすることも大切です。原稿確認は誠意を込め、先方からの校正は神の声だと思って受け止めること。さらに心ががけたいのは、誰も傷つけない記事にすること」。具体的で実践的なヒントが次々に飛び出し、参加者の目も輝きます。

▼自分たちの文章をさらにブラッシュアップ

こうしたアサイさんの言葉を受けて、それぞれに改めて自分たちの書いた文章を見直します。ここまでの感想を参加者のひとりに伺いました。以前ライターとして活動していた経験を持ち、7月からカミカワークプロデューサーとして働いている渋谷光希さんです。

▼コミュニティプロデューサーとして働く渋谷光希さん

「我流でライターをやっていたので、基本に立ち返ることができました。改めて『文章を書くって何だろう?』と。今は地域おこしの仕事をしていますが、書くことを生業にするというわけでなくても『伝えられる人』になれたらなぁと強く感じました」(渋谷さん)
そうこうするうちに、講座もいよいよ終盤です。午後2時30分からは、「拡散するためのSNS文章術」ということで、今の時代に必要なSNSでの書き方について、教えてもらいました。Facebook、Twitter、Instagramなど、ツールごとの解説はどれも的確で、参加者たちも思わず納得です。解説を聞いた上で、今度は実際にSNSに投稿するための文章を考えてみました。

▼記事とSNS投稿文の違いについてレクチャーするアサイさん

2日目の最後は、参加者が書いたタイトルの発表とフィードバックです。
そして2日間の締めくくりとしてアサイさんが改めて言うのは、自分自身を発信する際の「気づき」についてです。お互いに書いた文章を交換した時、たとえば自分が思いもしなかったことに相手が引っかかっていたり、意外なところが伝わってなかったり。ここで1日目の講座から、すべてつながりました。まずは自分自身について知ること。それこそが、いい文章、伝わる文章を書くためのスタートラインなのです。それを知った参加者たちの書く文章は、きっと今までとは格段に変わってくるはずです。