▼大雪 森のガーデン

7月より3回にわたって開催する大雪山大学「森の自然体験プログラム開発講座」。この講座で目指すのは、大雪 森のガーデンが何度も訪れたくなるような魅力的な場となるような体験プログラムの開発や、それを担うガイドの育成を行うこと。8月24日(土)に講座の第2回が行われました。受講者は、大雪 森のガーデンの運営等に関わる人々。講師は前回に引き続き、NPO法人森のこだまの上野真司さんです。
講座は朝9時30分から。まずは「大雪 森のガーデンプログラムワークショップ」、上野さんの地域資源ガイド論からスタートします。
「本当の旅の発見とは、新しい景色を見ることではなく、新しい視点を持つこと。そのためには、ガイドは状況だけを説明しているのではダメ。スペックを伝えるのではなく、ストーリーを伝える必要があるのです」
説得力のある上野さんの言葉に、受講者は熱心に耳を傾けます。
▼スライドを見ながら、分かりやすく響いてくる講座

座学によって意識をしっかりと高めたところで、次は実践です。前回の講座では、上川町やガーデンの魅力を1枚の紙に1つずつ書き出しました。
▼前回書いた紙を囲んで、改めて話し合う受講者たち

前回出た意見を踏まえた上で、今回は、「アロマづくり体験をどう有料メニュー化していくか?」をテーマに、2班に分かれて考えつつ、実際の体験プログラムの概要や流れを練っていきます。
▼2班に分かれて、それぞれに考え中……

課題となったのは、素材を蒸留してアロマをつくるのにかかる45分間という長い時間の過ごし方。参加してくれるお客さんにガーデンの魅力を満喫して頂くために、ガイドに何ができるかを考えます。ガーデンを散策する案や、ファミリーなら「遊びの森」で遊んで過ごすのも楽しいかもという案など、活発な意見交換が見られました。
▼遊びの森には、大きなリング型遊具もある

そうして話し合っていく中で、具体的な体験プログラムの概要と流れが出来上がりました。5人以下の少人数で1グループとし、1時間半でアロマエッセンシャルウォーター作りを体験してもらうモデルプランです。
▼みんなで考え、作り上げた体験会のプラン

そして午後からは実際に一般のお客さんを迎えて、モデルプランに沿った体験会を実施します。素材となるエゾマツやトドマツ、蒸留器などもあらかじめ準備しておきます。
▼会場となる体験棟では、着々と準備が進められる

2班あるうち、今回はガーデナーの影浦美里さんと工藤真希江さんのチームに密着させてもらいました。果たして、プラン通りに進行できるでしょうか? ドキドキしながらお客さんを待ちます。
▼普段から大雪 森のガーデンでスタッフとして働く影浦さん(左)と工藤さん

午後1時30分、いよいよ体験会スタートです。影浦さんと工藤さんチームには、高校時代の同級生だという4人の女性グループが参加しました。
▼左から松村茉鈴さん、石田七瀬さん、吉田涼音さん、吉河茜音さん

まずはエッセンシャルウォーターの材料を採集。エゾマツとトドマツの香りを実際に嗅いでもらい、どちらが好みか決めてもらいます。手触りや葉の柔らかさなど、それぞれの違いも体験してもらうことで、自然との触れ合いが実感できるのです。
▼「手で揉んで香りを立てるといいですよ」と説明(写真左)/エッセンシャルウォーターにする葉を採取(写真右)


次は気に入った方のマツの葉を採取します。これがあのアロマに生まれ変わるなんて……と、参加者も既にワクワクしている様子。
体験棟に戻り、採取した葉を細かく切っていきます。「細かくする方が蒸留しやすくなるんですよ」とのガイドの言葉を受け、みんなでハサミを持ってチョキチョキ。
▼開放的な体験棟で過ごす、楽しい時間

マツの葉の準備ができたら、いよいよエッセンシャルウォーターを抽出していきます。蒸留器の登場です。
▼立派な蒸留器の準備も万端

このチームのプランでは、最初の1滴が落ちるところは参加者に見てもらおうと決めていました。
▼みんなで蒸留器を囲み、その瞬間を待つ

最初の1滴が落ちるまで、5分程度。その瞬間を見逃すまいと、みんなで見守ります。すると、ポタリ! 待望の1滴が落ちました。
▼待ちに待った瞬間が訪れた!

これで、後は蒸留器に任せて待つだけです。プランを練っている時、45分間かかる蒸留時間をどうするのかが課題でした。影浦さんと工藤さんチームでは、参加者の希望を聞いて、それを叶えることに時間を充てました。すると、参加者から「ガーデンを散策したい」との声が上がりました。まさにガーデナーとしての本領発揮、散策しながら多種の植物についてそれぞれの特徴を解説していきます。
▼影浦さんの解説に興味深げな参加者たち

体験棟に戻ると、エッセンシャルウォーターが完成していました。自分たちで選び、採取したマツの葉のエッセンスを手に、みんな満足そうです。「久しぶりに自然と触れ合えて、癒されました」と、参加者の松村さん。「花の種類が知れたのも良かったです」との吉河さんの言葉は、45分間の蒸留中も参加者が十分に楽しめたことの証です。
▼完成したエッセンシャルウォーターを手に笑顔

体験会は無事に終了しましたが、講座はこれで終わりではありません。お客さんが帰った後、再びデスクを囲んで振り返りです。実際の体験会を振り返って紙にまとめ、その上で改良点を探っていきます。
▼上手くいった点、上手くいかなかった点、改善点などを付箋に書いて貼っていく

最後は、それぞれに感じたことなどを発表していきます。体験会をまとめた紙は付箋だらけ。「待ち時間に(上川町特産の)大豆コーヒーを出したらいいのでは?」などのアイデアも生まれるなど、付箋の数だけ気づきと学びがありました。
▼付箋の数が、考え、学んだ量の多さを表している

この3回にわたって開催される「(仮)森の自然体験プログラム開発講座」で目指すのは、一度きりで満足してしまうのではない、大雪 森のガーデンをもう一度訪れたくなるような魅力的な場にすること。2回目にして、そのヒントが受講者たちにもようやく見え始めたのかもしれません。次回への期待が、ますます高まります。